問題:力学的エネルギー保存⑤
図1に示すように、ばね定数\(k\)のばねの上に皿を乗せた。
ばねと皿はいずれも質量は無視でき、ばねは初め自然長であった。
その後、質量\(m\)の物体を皿にのせて急に手を離したところ、
ばねを押し縮めながら落下した。
重力加速度の大きさを\(g\)として以下の問いに答えよ。
問1 最下点は初めの高さからどれだけ下がった位置か。
問2 物体の速さが最大となるのは初めの高さからどれだけ下がった位置か。
〔解き方〕
〔公式〕
◆力学的エネルギー
・状態①での力学的エネルギー
\(E_1 = K_1 + U_{g1} + U_{k1} \cdots (1)\)
・状態②での力学的エネルギー
\(E_2 = K_2 + U_{g2} + U_{k2} \cdots (2)\)
今回の問題では、上式のような力学的エネルギーから保存則を立てて問題を解きます。 以下のステップに従って立式しましょう。
ステップ1:各状態の力学的エネルギーを表現する
まず、力学的エネルギー\(E\)とは運動エネルギー\(K\)と位置エネルギー\(U\)の和です。
\(E = K + U\)
このうち、位置エネルギー\(U\)は重力による位置エネルギー\(U_g\)と弾性力による
位置エネルギー\(U_k\)に分かれるので、上式は次の様になります。
\(E = K + U_g + U_k\)
更に、各エネルギーの公式を活用すると下記の様になります。
\(E = \frac{1}{2}m v^2 + mgh + \frac{1}{2}k x^2\)
次に、この式に含まれる速さ\(v\)や高さ\(h\)などを一つ一つ定めます。
今回、高さ\(h\)は図2のように状態①の高さを原点とし、
下向きを正とする\(x\)軸で表現しましょう。
状態①であれば、速度\(0\), 高さ\(0\),ばねの縮み\(0\)なので、
条件代入後の式(1)が得られます。
また、状態②を運動中の任意の位置\(x\)とし、
②では未知の速度\(v\)をもち, 高さは\(-x\),ばねの縮みは\(x\)と
表現できるので、条件代入後の式(2)が得られます。
ここで注意してもらいたいのは、回答者が立てた\(x\)軸を用いて、
“高さ” や “縮み”を表現しているということです。
これらを単純に\(h\)や\(x\)と表現するばかりでなく、
必要に応じて座標で表現するよう気を付けましょう。
ステップ2:前の状態と後の状態を決める
保存則の基本的な式の構造は以下の通りです
\((前の状態) = (後の状態)\)
“前” と “後” の状態は設問ごとに考えます。
詳しくは各設問の解答・解説を参照して下さい。
ステップ3:仕事を計算する
ステップ2で “前” と “後” を決めたら、その間の仕事を計算します。 今回は、運動中の物体(と皿を合わせたもの)に働く力は図3の枠内に 示すように重力と弾性力のみ働きます。 これらの力のする仕事を計算すべきですが、 重力や弾性力のする仕事は位置エネルギー\(U_g, U_k\)として 計上しているので不要です。よって仕事は\(0\)となります。
ステップ4:立式する
ここまでのステップを踏まえて
\((前の状態) + (仕事) = (後の状態)\)
という形で立式します。
あとは、この式を数学的に解けばokです。
注意点
今回は解説の為に上記のようなステップで解きますが、 こうした問題に慣れてきたらステップ2から始めてステップ4まで行い、 ステップ4で立式する最中に各状態の力学的エネルギーを具体的に 表わすという手順で解けるようになってください。
運動エネルギーの詳細はコチラ!(Map)重力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
弾性力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
力学的エネルギー保存の詳細はコチラ!(Map)
〔解答と解説〕
問1
答え:\(\frac{2mg}{k}\)
[解き方]の条件代入後の式(1) ~ (2)を立式した上で必要なものを使って解きましょう。
まず、①を”前の状態”、②を”後の状態”として立式します。
\(
\begin{align*}
\text{(前の状態)} + \text{(仕事)} &= \text{(後の状態)} \\
E_1 + 0 &= E_2\\
0 &= \frac{1}{2}m v^2 + mg(-x) + \frac{1}{2}k x^2 \\
\end{align*}
\)
最下点では速さ\(v = 0\)となるので、上式中の
状態②の速さ\(v\)にこれを代入し
\(
\begin{align*}
0 &= \frac{1}{2}m\cdot 0^2 + mg(-x) + \frac{1}{2}k x^2 \\
\end{align*}
\)
を解きます。
\(x\)の2次方程式となっているので因数分解し、
\(
\begin{align*}
0 &= mg(-x) + \frac{1}{2}k x^2 \\
0 &= \frac{1}{2}k x(x – \frac{2mg}{k}) \\
x &= 0, \frac{2mg}{k} \\
\end{align*}
\)
このうち\(x = 0\)は最初の位置を表わしているので不適となり、
\(x = \frac{2mg}{k}\)
問2
答え:\(\frac{mg}{k}\)
まず、問1と同様に①を”前の状態”、②を”後の状態”として
以下の式まで計算します。
\(
\begin{align*}
0 &= \frac{1}{2}m v^2 + mg(-x) + \frac{1}{2}k x^2 \\
\frac{1}{2}m v^2 &= -\frac{1}{2}k x^2 + mgx \\
\end{align*}
\)
ここで、右辺が最大となる\(x\)を見つけます。
右辺が最大となる\(x\)が分かれば、
それと等号で結ばれた左辺の運動エネルギーも最大となり、
それに伴って速さ\(v\)も最大となると分かります。
ここで右辺は\(x\)の2次式となっているので、
この最大値を求める為に平方完成します。
\(
\begin{align*}
\frac{1}{2}m v^2 &= -\frac{1}{2}k (x^2 – \frac{2mg}{k}x) \\
&= -\frac{1}{2}k (x – \frac{mg}{k})^2 + \frac{m^2g^2}{2k} \\
\end{align*}
\)
よって、\(x = \frac{mg}{k}\)となるときに運動エネルギー、および速さ
は最大値をとると分かります。