高校物理の問題解説: 力学的エネルギー保存の法則②

問題:力学的エネルギー保存②

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図1に示すように、地表から高さ\(h\)の位置に 質量\(m\)の物体をおき、水平右向きに初速度\(v_0\)で投射した。 重力加速度の大きさを\(g\)として以下の問いに答えよ。
問1 地表から高さ\(d\)に達したときの速さ\(v\)を求めよ。
問2 地表に達したときの速さ\(v’\)を求めよ。


   

〔解き方〕

   

 〔公式〕

 ◆力学的エネルギー 

・状態①での力学的エネルギー
  \(E_1 = K_1 + U_{g1} + U_{k1} \cdots (1)\)
・状態②での力学的エネルギー
  \(E_2 = K_2 + U_{g2} + U_{k2} \cdots (2)\)

今回の問題では、上式のような力学的エネルギーから保存則を立てて問題を解きます。 以下のステップに従って立式しましょう。

ステップ1:各状態の力学的エネルギーを表現する

まず、力学的エネルギー\(E\)とは運動エネルギー\(K\)と位置エネルギー\(U\)の和です。
  \(E = K + U\)
このうち、位置エネルギー\(U\)は重力による位置エネルギー\(U_g\)と弾性力による 位置エネルギー\(U_k\)に分かれるので、上式は次の様になります。
  \(E = K + U_g + U_k\)
更に、各エネルギーの公式を活用すると下記の様になります。
  \(E = \frac{1}{2}m v^2 + mgh + \frac{1}{2}k x^2\)
この式に含まれる、速さ\(v\)や高さ\(h\)などを一つ一つ定めます。 例えば、図2に示す状態①であれば、速度\(v_0\), 高さ\(h\), ばねの伸び\(0\) であるので条件代入後の式(1)のようになります。 同様に状態②について考えれば式(2)が得られます。

ステップ2:前の状態と後の状態を決める

保存則の基本的な式の構造は以下の通りです
  \((前の状態) = (後の状態)\)
例えば問1で状態②の速さ\(v\)を求める場合は、 既知の状態①を”前”として、状態②を”後”として解くべきだと判断します。
このように、”前” と “後” の状態を①, ②のいずれとするかを設問ごとに考えます。

ステップ3:仕事を計算する

ステップ2で “前” と “後” を決めたら、その間の仕事を計算します。 詳しくは各設問の解答・解説を参照して下さい。

ステップ4:立式する

ここまでのステップを踏まえて
  \((前の状態) + (仕事) = (後の状態)\)
という形で立式します。
あとは、この式を数学的に解けばokです。

注意点

今回は解説の為に上記のようなステップで解きますが、 こうした問題に慣れてきたらステップ2から始めてステップ4まで行い、 ステップ4で立式する最中に各状態の力学的エネルギーを具体的に 表わすという手順で解けるようになってください。

運動エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
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重力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
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弾性力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
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力学的エネルギー保存の詳細はコチラ!(Map)
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〔解答と解説〕

問1

 答え:\(v = \sqrt{{v_0}^2 + 2g(h – d)}\)

[解き方]の条件代入後の式(1), (2)を立式した上で必要なものを使って解きましょう。
今回は”前の状態”を①、”後の状態”を②として解きます。また、①→②にかけては 図3の枠内に示すように重力が働きます。これによる仕事を計算すべきですが、 重力のする仕事は位置エネルギー\(U_g\)として計上しているので不要です。 これらを踏まえると、
\( \begin{align*} \text{(前の状態)} + \text{(仕事)} &= \text{(後の状態)} \\ E_1 + 0 &= E_2\\ \frac{1}{2}m{v_0}^2 + mgh + 0 &= \frac{1}{2}m v^2 + mgd + 0 \\ \frac{1}{2}m{v_0}^2 + mgh &= \frac{1}{2}m v^2 + mgd \\ {v_0}^2 + 2gh &= v^2 + 2gd \\ v^2 &= {v_0}^2 + 2gh – 2gd \\ v^2 &= {v_0}^2 + 2g(h – d) \\ \end{align*} \)
\(v > 0\)より、
\( \begin{align*} v &= \sqrt{{v_0}^2 + 2g(h – d)} \\ \end{align*} \)


問2

 答え:\(v’ = \sqrt{{v_0}^2 + 2gh}\)

問1では、高さ\(d\)に達したときの速さ\(v\)を求めた。 地表に達したとき、この高さが\(0\)となるので \(d=0\)を問1の結果に代入すればよい。
\( \begin{align*} v’ &= \sqrt{{v_0}^2 + 2g(h – 0)} \\ &= \sqrt{{v_0}^2 + 2gh}\\ \end{align*} \)