問題:物体の静止②
図1に示すように質量\(10\,\text{kg}\)の物体に2本の軽い糸A, Bを取り付けて物体を静止させた。
重力加速度を\(9.8\,\text{m/s}^2\)として以下の問いに答えよ。
問1 糸Aの張力\(T_A\)を求めよ。
問2 糸Bの張力\(T_B\)を求めよ。
〔解き方〕
〔公式〕
◆力のつり合い
・\(x\)軸方向について
\(0=F_x \cdots (1)\)
・\(y\)軸方向について
\(0=F_y \cdots (2)\)
今回の問題では、物体は静止し続けているので力のつり合いを立てて問題を解きます。以下のステップに従って立式しましょう。
ステップ1:力の図示
物体には図2に示すような力が働いてます。これらの力を漏れなく列挙するには、
①遠隔力…離れていても働く力
②接触力…接しているときに働く力
に分けて図示するとよいでしょう。これまでに学習した遠隔力は重力だけなので、まずはそれを素直に図示します。
一方、これまでに学習した接触力には張力や弾性力など様々あります。
こうした接触力は、対象物体が他の何かと接していたらそこに働くと考えます。
今回であれば、物体は糸Aや糸Bと接しているので、そこに力が働くと考えて図示します。
ステップ2:軸を定める
力のつり合いの式には、当然 ”力” が含まれますが、これはベクトル量なので大きさと向きをもちます。 そのため軸を定めて、軸と同方向の力は正、軸と逆方向の力は負として向きを取り扱う必要があります。 尚、今回は”平面上”での運動を扱うので軸が2つ必要になります。 水平方向に\(x\)軸、鉛直方向に\(y\)軸を定めておきましょう(図3)。
ステップ3:立式する
力のつり合いを簡単に説明すると、着目する方向に働く全ての力を合わせて\(0\)になるという式です。 今回であれば、着目する方向を\(x\)軸方向とすれば、全ての力とは糸Aや糸Bの水平成分です(図4)。 向きを考慮してこれらの力を足し合わせ、\(0\)になるという式を書けば、条件代入後の式(1)のようになります。 鉛直方向も同様の考え方で力を列挙し(図5)立式し、条件代入後の式(2)を得ます。
ステップ4:連立して解く
条件代入後の式(1), (2)から未知数を求めます。ここは、数学的に考えて解けばokです。 具体的には、式(1), (2)ともに未知数\(T_A\), \(T_B\)が含まれているので、 これらの式から\(T_B\)を消去して\(T_A\)を求めて、 それをどちらかの式に代入して\(T_B\)が求められると分かります。 計算結果は[解答と解説]を参照してください。
力のつり合いの詳細はコチラ!(Map)〔解答と解説〕
問1
答え:\(T_A = 49\,\text{N}\)
[解き方]で紹介した条件代入後の式(1), (2)を用いて解いていきます。
式(1)より、
\(
\begin{align*}
0 &= – T_A \cos{30^\circ} + T_B \cos{60^\circ}\\
0 &= – \frac{\sqrt{3}}{2} T_A + \frac{1}{2} T_B\\
T_B &= \sqrt{3} T_A \cdots (1)’\\
\end{align*}
\)
これを式(2)に代入して、
\(
\begin{align*}
0 &= T_A \sin{30^\circ} + T_B \sin{60^\circ} – 10 \times 9.8\\
0 &= \frac{1}{2} T_A + \sqrt{3}T_A \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} – 98\\
0 &= 2T_A – 98\\
T_A &= 49\,\text{N}
\end{align*}
\)
問2
答え:\(T_B = 85\,\text{N}\)
問1で求めた張力\(T_A\)を式(1)’に代入し、
\(
\begin{align*}
T_B &= \sqrt{3} T_A\\
T_B &= \sqrt{3} \cdot 49\\
&\approx 1.73 \cdot 49\\
&\approx 85\,\text{N}\\
\end{align*}
\)