高校物理の問題解説: 等加速度運動

問題:等加速度運動

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図1のように、点Oで斜面上向きに\(19.6\,\text{m/s}\)の速さを与えて物体を投げた。 物体は斜面に沿って上昇し、\(2.0\,\text{s}\)後に\(9.8\,\text{m/s}\)になった。 以下の問いに答えよ。
問1 物体の加速度\(a\)を求めよ。
問2 \(3.0\,\text{s}\)後の速度\(v\)を求めよ。
問3 \(3.0\,\text{s}\)後の位置\(x\)を求めよ。
問4 物体が最高点Pに達する時刻\(t\)を求めよ。
問5 最高点Pの位置\(x\)を求めよ。
問6 下降して物体が点Oに戻る時刻\(t\)を求めよ。


   

〔解き方〕

   

 〔公式〕

 ◆加速度の定義 

  \(a = \frac{v_2 – v_1}{t_2 – t_1} = \frac{\Delta v}{\Delta t} \cdots (1)\)

 ◆等加速度運動の公式 

  \(v = v_0 + at \cdots (2)\)
  \(x = x_0 + v_0t + \frac{1}{2}at^2 \cdots (3)\)
  \(v^2 – v_0^2 = 2a(x-x_0) \cdots (4)\)

等加速度運動を扱う上では、まずその運動の加速度\(a\), 初速度\(v_0\), 初期位置\(x_0\)求める必要があります。 これらは問題文中に与えられている場合もあれば、そうでない場合もあります。 特に加速度は与えられていないことが多く、その場合は式(1)や\(v-t\)グラフを用いて求めます。
加速度\(a\), 初速度\(v_0\), 初期位置\(x_0\)が分かってしまえば、これらを式(2)~(4)に代入することで位置\(x\)と速度\(v\)と時刻\(t\)の関係を求めることができます。
例えば、条件代入後の式(2)なら\(t\)と\(v\)が未知数として式に含まれているので、\(t\)が分かれば\(v\)を求めることができますし、逆に\(v\)が分かれば\(t\)を求めることもできます。
式(3)には未知数\(t\)と\(x\)が含まれ、式(4)には未知数\(v\)と\(x\)が含まれており、こうした未知数に対して、設問で与えられる条件と求めたいものから使う式を判断します。

等加速度運動の詳細はコチラ!(Map)
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〔解答と解説〕

問1

答え:斜面下向きに\(4.9\,\text{m/s}^2\)

斜面上向きを正として、式(1)を用いて加速度を求めます。
問題文より、物体は\(t = 0\,\text{s}\)で斜面上向きに\(19.6\,\text{m/s}\)だったのが、\(t = 2.0\,\text{s}\)で斜面上向きに\(9.8\,\text{m/s}\)になっているので
\(a = \frac{\Delta v}{\Delta t} = \frac{9.8 – 19.6}{2.0 – 0} = -4.9\,\text{m/s}^2\)
計算結果が負なので、物体の加速度は斜面下向きだと分かります。(図2)
尚、この時点で
 \(a=-4.9\,\text{m/s}^2\)
 \(v_0 = 19.6\,\text{m/s}\)
 \(x_0 =0\,\text{m}\)
と分かったので、これを式(2)~(4)に代入することで、以下の\(t\), \(v\), \(x\)の関係式を求めることができます。
 \(v = 19.6 + (-4.9)t \cdots (2)\)
 \(x = 0 + 19.6t + \frac{1}{2}(-4.9)t^2 \cdots (3)\)
 \(v^2 – 19.6^2 = 2(-4.9)(x-0) \cdots (4)\)
※[解き方]で説明した代入後の式と同じ


問2

 答え:斜面上向きに\(4.9\,\text{m/s}\)

問1の解説で求めた式(2)~(4)の中から適切に式を選んで解きます。
問2では\(t = 3.0\,\text{s}\)という時刻\(t\)の情報が与えられ速度\(v\)を求めるので、\(t\)と\(v\)を含む式(2)を利用します。
\(v = 19.6 + (-4.9)\cdot 3.0 = 4.9\,\text{m/s}\)
計算結果が正なので、(式(2)は斜面上向きを正として立式してるので)物体の速度は斜面上向きだと分かります。(図3)


問3

 答え:\(37\,\text{m}\)

問1の解説で求めた式(2)~(4)の中から適切に式を選んで解きます。
問3では\(t = 3.0\,\text{s}\)という時刻\(t\)の情報が与えられ位置\(x\)を求めるので、\(t\)と\(x\)を含む式(3)を利用します。
\(x = 0 + 19.6\cdot 3.0 + \frac{1}{2}(-4.9)\cdot 3.0^2\)
\(x = 36.75\)
\(x \approx 37\,\text{m}\) (図4)


問4

 答え:\(4.0\,\text{s}\)

問1の解説で求めた式(2)~(4)の中から適切に式を選んで解きます。
問4では最高点において速度\(v\)が\(0\,\text{m/s}\)になることを利用して時刻\(t\)を求めるので、\(t\)と\(v\)この文字を含む式(2)を利用します。
\(0 = 19.6 + (-4.9)t \)
\(t = \frac{19.6}{4.9}\)
\(t = 4.0\,\text{s}\) (図5)


問5

 答え:\(39\,\text{m}\)

問1の解説で求めた式(2)~(4)の中から適切に式を選んで解きます。
問5では最高点において速度\(v\)が\(0\,\text{m/s}\)になることを利用して位置\(x\)を求めるので、この文字を含む式(4)を利用します。
\(0^2 – 19.6^2 = 2(-4.9)(x-0)\)
\(x = \frac{19.6^2}{2\cdot 4.9}\)
\(x = 39.2\,\text{m}\)
\(x \approx 39\)
したがって、物体が到達する最高点Pの位置は\(39.2\,\text{m}\)です。
(別解)
問4で最高点になる時刻\(t = 4.0\,\text{s}\)と分かっているので、\(t\)と\(x\)を含む式(3)を利用して、
\(x = 0 + 19.6\cdot 4.0 + \frac{1}{2}(-4.9)\cdot 4.0^2\)
\(x = 39.2\)
\(x \approx 39\)
と計算できます。(図6)


問6

 答え:\(8.0\,\text{s}\)

問1の解説で求めた式(2)~(4)の中から適切に式を選んで解きます。
問6では元の位置\(x = 0\,\text{m}\)になることを利用して時刻\(t\)を求めるので、\(t\)と\(x\)を含む式(3)を利用します。
\(0 = 0 + 19.6t + \frac{1}{2}(-4.9)t^2 \)
\(0 = 8t – t^2 \)
\(0 = t( t – 8 ) \)
\(t = 0, 8.0\,\text{s}\)
このうち、\(t = 0\)は物体を投げた瞬間を指す時刻なので、戻ってくる時刻は\(t = 8.0\,\text{s}\)となります。(図7)