高校物理の問題解説: 力学的エネルギー保存の法則⑥

問題:力学的エネルギー保存⑥

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図1に示すように質量\(1.0\,\text{kg}\)の物体Aと質量\(2.0\,\text{kg}\)の物体Bを軽い糸で繋ぎ、 滑車を介して吊るした。初め地表から\(0.4\,\text{m}\)の位置で物体Bを支えたのち、 両物体を離したところ物体Aは鉛直上向きに運動した。 重力加速度の大きさを\(9.8\,\text{m/s}^2\)として以下の問いに答えよ。
問1 物体Bが地表に達する直前の物体Bの速さを求めよ。


   

〔解き方〕

   

 〔公式〕

 ◆力学的エネルギー 

<物体Aについて>
・初めの状態の力学的エネルギー
  \(E_{A1} = K_1 + U_{g1} + U_{k1} \cdots (1)\)
・終わりの状態の力学的エネルギー
  \(E_{A2} = K_2 + U_{g2} + U_{k2} \cdots (2)\)
<物体Bについて>
・初めの状態の力学的エネルギー
  \(E_{B1} = K_1 + U_{g1} + U_{k1} \cdots (3)\)
・終わりの状態の力学的エネルギー
  \(E_{B2} = K_2 + U_{g2} + U_{k2} \cdots (4)\)

今回の問題では、上式のような力学的エネルギーから保存則を立てて問題を解きます。 以下のステップに従って立式しましょう。

ステップ1:各状態の力学的エネルギーを表現する

まず、力学的エネルギー\(E\)とは運動エネルギー\(K\)と位置エネルギー\(U\)の和です。
  \(E = K + U\)
このうち、位置エネルギー\(U\)は重力による位置エネルギー\(U_g\)と弾性力による 位置エネルギー\(U_k\)に分かれるので、上式は次の様になります。
  \(E = K + U_g + U_k\)
更に、各エネルギーの公式を活用すると下記の様になります。
  \(E = \frac{1}{2}m v^2 + mgh + \frac{1}{2}k x^2\)
次に、この式に含まれる速さ\(v\)や高さ\(h\)などを一つ一つ定めます。 今回、高さ\(h\)は図2のように物体A, Bそれぞれの初めの位置を基準\(0\)として表現しましょう。
物体Aの初めの状態であれば、速さ\(0\), 高さ\(0\)なので条件代入後の式(1)が得られます。
物体Aの終わりの状態であれば、速さ\(v\)とし, 高さ\(0.4\)なので条件代入後の式(2)が得られます。
同様に物体Bについて考えると、式(3), (4)が得られます。

ステップ2:前の状態と後の状態を決める

保存則の基本的な式の構造は以下の通りです
  \((前の状態) = (後の状態)\)
“前” と “後” の状態は設問ごとに考えます。 今回は、両物体を離したときを”前”とし、物体Bが地表に達する直前を”後”として解きます。

ステップ3:仕事を計算する

ステップ2で “前” と “後” を決めたら、その間の仕事を計算します。 今回、物体A, Bに働く力は図3の枠内に示すように重力や張力が働きます。 これらの力のする仕事を計算すべきですが、 重力のする仕事は位置エネルギー\(U_g\)として計上しているので不要ですので、 張力による仕事のみを計算します。
物体Aならば、張力\(T\)と同じ方向に\(0.4\,\text{m}\)だけ移動するので、張力のする仕事は
\(W_A = T \cdot 0.4\cdot cos0^\circ = 0.4T\)
となります。
物体Bならば、張力\(T\)と逆の方向に\(0.4\,\text{m}\)だけ移動するので、張力のする仕事は
\(W_B = T \cdot 0.4 cos180^\circ = – 0.4T\)
となります。

ステップ4:立式する

ここまでのステップを踏まえて
  \((前の状態) + (仕事) = (後の状態)\)
という形で物体A, Bそれぞれについて立式します。
あとは、この式を数学的に解けばokです。

注意点

今回は解説の為に上記のようなステップで解きますが、 こうした問題に慣れてきたらステップ2から始めてステップ4まで行い、 ステップ4で立式する最中に各状態の力学的エネルギーを具体的に 表わすという手順で解けるようになってください。

運動エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
×


重力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
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弾性力による位置エネルギーの詳細はコチラ!(Map)
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力学的エネルギー保存の詳細はコチラ!(Map)
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〔解答と解説〕

問1

 答え:\(1.6\,\text{m/s}\)

[解き方]の条件代入後の式(1), (3)およびステップ3で計算した仕事から、 物体Aの力学的エネルギーと仕事の関係は以下の様になる。
\( \begin{align*} \text{(前の状態)} + \text{(仕事)} &= \text{(後の状態)} \\ E_{A1} + W_A &= E_{A2}\\ 0 + 0.4T &= \frac{1}{2}\cdot 1.0\cdot v^2 + 1.0\cdot 9.8\cdot 0.4 \cdots (5)\\ \end{align*} \)
同様に、[解き方]の条件代入後の式(2), (4)およびステップ3で計算した仕事から、 物体Bについては。
\( \begin{align*} \text{(前の状態)} + \text{(仕事)} &= \text{(後の状態)} \\ E_{B1} + W_B &= E_{B2}\\ 0 + (-0.4T) &= \frac{1}{2}\cdot 2.0\cdot v^2 + 2.0\cdot 9.8\cdot (-0.4) \cdots (6) \\ \end{align*} \)
となる。式(5), (6)の辺々を足して計算すると \( \begin{align*} 0 &= \frac{1}{2}\cdot 3.0\cdot v^2 – 9.8\cdot 0.4 \\ \frac{1}{2}\cdot 3.0\cdot v^2 &= 9.8\cdot 0.4 \\ v^2 &= \frac{2}{3.0}\cdot 9.8\cdot 0.4 \\ \end{align*} \)
\(v > 0\)より、
\( \begin{align*} v &= \sqrt{\frac{2}{3.0}\cdot 9.8\cdot 0.4} \\ &= \sqrt{\frac{2^2\cdot 7^2}{3\cdot 5^2}} \\ &= \frac{2\cdot 7}{5}\sqrt{\frac{1}{3}} \\ &= \frac{2\cdot 7}{3\cdot 5}\sqrt{3} \\ &\approx \frac{14}{15}\cdot 1.73 \\ &\approx 1.6 \\ \end{align*} \)